「フースラーボイストレーニングの実践と解剖学」がニュースで紹介されました

朝日新聞デジタル

https://www.asahi.com/and_M/pressrelease/pre_6907607/

時事.com

 

生理学的ボイストレーニング(ボイトレ) の最高峰、ボーカル理論の聖典とも言われるフースラーメソード(フースラー発声学、フースラー発声法)を楽しく学べる「ワークショップ」に関する記事。

 

フースラーボイストレーニングの実践と解剖学_イメージ画像

フースラーボイストレーニングの実践と解剖学_イメージ画像

■ フースラーボイストレーニングとは

フースラーボイストレーニングとは、1889~1969に生きたスイスの発声訓練教師であったフレデリック・フースラーという人物が考え出した発声訓練法のことです。

発声訓練法といっていますが、実は発声訓練法ではないのです。

???ですね。

辞書の上で「訓練」というのは、ある技術について教え込み、身につけさせることという定義です。しかし、フースラーが言っている発声訓練法とは、人間が、本来持っている喉の潜在能力を解放する方法を論じています。

正確には、発声訓練法ではなく、「喉の潜在能力を呼び覚まし、本来持っている能力を再活性化させる方法」といったほうが正しいのです。しかし、一般的にわかりやすいように共通言語として「発声訓練法(ボイストレーニング)」という言葉を使っています。

例えば、赤ちゃんの泣き声を想像してみてください。言語という思考に邪魔されていないため、喉の運動能力をパワフルに使いこなしています。喉本来が持つ機能を使っているだけです。

「近所迷惑だから、音量を下げて泣きます。」なんて理性のブレーキが効く赤ちゃんは存在しないわけです(笑)。

便利な社会に身を置く私たちの喉の機能は、社会的制限をたくさん受けまくっていて、かなり衰退している、とフースラーは考えたわけです。

声を出すための喉の機能は存在するのに、使われずにいる。喉は体の中に隠れていて見えないため、日常生活を送る中で、声を出すメカニズムをはっきりわかる機会はありません。

見えないし、メカニズムがわからないので、「声」は「才能」や「呼吸法が大事」ということに置き換えられてしまい、間違った認識がボイストレーニングの一般常識になってしまっているのです。

一般的に流布している発声法は、生理解剖学的につじつまが合わないことが主に指導されています。例えば、腹式呼吸、鼻腔に響かせる、横隔膜を使う、喉を使ってはいない、など一般的によく言われている発声法は、科学的にあり得ない方法論なのです。

喉の筋肉などに対する生理解剖学的知識の欠如が招く誤った発声指導法に対して、フースラーは、「指導者や歌に従事する者が、すでに出てきた声にどうこういうのではなく、発声器官がどのように動くと声が出るのかを知らなくてはいけない」と説きました。

逆を言えば、そのようなことを知らずに感覚のみで発声指導する教師や歌い手があまりに多いことを嘆いたのです。それは、フースラーが生きた時代も、現代も変わりがありません。

フースラーは、声帯の構造を知り、部品の使い方によって出る声が違うこと、また、声帯の潜在能力を呼び覚ますには、声帯を支える「喉を吊る筋肉=喉頭懸垂機構」を鍛えることの重要性を徹底的に研究しました。

深い洞察力と叡智と音を愛する心を持ったフースラーは、25年の年月をかけて彼のノウハウを「うたうこと」という本にしたためています。邦訳も出ていますが、残念ながら、誤訳が多く、フースラーの真意が伝わりにくいものになっています。

■ フースラーメソードの可能性

音楽家・奥村多恵子の教室には邦楽、演歌、日本民謡、八重山民謡、落語、浪曲、琵琶師、ボイストレーナーの方も通われています。一般的に「ボイトレ」というと歌手のためという印象が強いですが、声がれ(声枯れ)に悩む保育士、講師、先生も通われています。

「良い声」というのは、歌だけではなく、人生のあらゆることに良い影響をおよぼす可能性を持っています。

また、喉頭や咽頭のさまざまな筋群を動かし、筋肉や神経を活性化させていくことは、高齢者の誤嚥の予防に役立つことも期待されます。

喉頭懸垂機構を始めとする解剖生理学に基づくフースラボイストレーニングをもっと世の中に分かり易く広めていくことを目的として、音楽家・奥村多恵子と解剖学講師である黒澤一弘が協同して、相模大野・つむぐ指圧治療室にて定期的なフースラボイストレーニングのワークショップを開催していくことになりました。

今回も、現在のボイストレーニングの弊害事情を体現するかの様に、音大の声楽科を出たが、または合唱をやっているが、喉の解剖生理学は全くわからないので参加しました、という方から、声が出なくて困っている方まで、遠くは群馬県から参加してくださる方までいらっしゃいました。

・生理解剖に則った、声を使った声帯靭帯ストレッチのワーク
・図解を見ながら&声を用いながらの声帯筋と喉頭懸垂機構の活性化
・7タイプの声を用いて、喉の中を満遍なく機能活性化
・どれだけ私たちが声に対する誤解を持っているかに気づくこと

これらを中心にワークショップを進めていきました。
最後に参加者皆さんに感想を伺うと、最初は声が出なかった参加者の方が「あ!出る」と明らかに2時間前には出なかった声で感想を述べられて、参加者一同ビックリ。ご本人が一番びっくりされていましたが、大変嬉しい変化でした。

講師の奥村曰く、「フースラーを実践するとザラに起こること」です。それは、指圧治療で言えば、動きが悪かった部分や反射箇所を指圧し、血流を良くし活性化することで「あ!動かしやすいです!」「痛みが半減しました!」などという現象が起こることと全く一緒で、超能力でもなんでもなく、ただただ道理にかなった結果なのです。

世界で一つだけの楽器が、自分の喉の中に入っていて、その子が「現代」という声の抑制を余儀なくされる社会の中で活躍の場がないまま眠っている。眠っている子を生理解剖学的に、確認しながら起きてもらおう!

誰の中にも眠る「その子」は、自分さえも遭遇したことのない音色を奏でたくて出番を待っているのです。

人は歌うために生まれてきた、とまでフースラーは語っています。

その歌とは、形の整った芸術的な歌を指しているのではありません。

誰もが原始に持っていた、社会抑制される前の発声機能の解放状態から出る声を指しています。

世の中には、ボイストレーニングを習ったがために、歌うことにたくさんの規制が施され(このように歌え、呼吸はこうしろ、姿勢はこうしろ、など)、歌うことが苦しくなっている方がたくさんいます。

苦しむために、習い始めたはずではないのです。

フースラーは、発声器官を解放していくこの発声法のことを「セラピーだ」とも言っています。

まさに、自分の声を使い、自分自身の尊さに気がついていく作業。

だって、世界で一つだけの、何億円積んでも買うことができない楽器が一人一人の体に眠っているのですから。眠らせたまま気がつかず死んでしまうか、その楽器を目覚めさせて唯一の楽器を楽しんで奏でるか。そして、その楽器の目覚めさせ方がわからないなら、生理解剖学的にアプローチして、道具の様子を見てみよう。そのようにして今回のワークショップは、道具の解説は、解剖生理の専門である黒澤が担当し、道具の動かし方は、実践を積んだ奥村が担当し、充実のワークショップとなりました。

今は、高齢者のみならず、今やコミュニュケーションが希薄になり、すべてデジタルでまかなえ、声を使わなくてもいい世界に住む若い人たちも声の出しにくさや誤嚥問題などに苦しんでいます。

喉が甘やかされすぎている証拠です。発声器官は活躍の場を待っている!!!

今後も社会貢献や問題提起をしながら、様々な問題を抱える方たちの解決の糸口になる様に、フースラーボイストレーニングの実践と解剖学のワークショップの回を重ねていきたいと思っています。